走れば早く着く。

トレイルラン、オリエンテーリング、登山に関するブログ。

IZU TRAIL Journey 2013 (後半戦)

早くもレース後1ヶ月。だいぶ時間が開いてしまったが、ようやくITJ後半戦レポート。ランもblogも3レストしないという目標をもっていたのだが、3週間以上空いてしまった。新ネタも沢山溜まってきたのでちょくちょくアップしていきたい。 [caption id="" align="alignnone" width="500"] AP2 仁科峠
Photo: Yoshito Katsumata[/caption] ●仁科峠(AP2/45km)~土肥駐車場(AP3/52km) コバさん、竹さんを見送りしばらく体調の回復を待つが向上しそうにないので、出発することにした。おそらく5分程遅れて出発したので、どちらかに追いつくことは絶望的に思えた。元々競っていたわけではないし、追っていたわけでもないが、エイドで並んでしまうと意識してしまうものだ。
エイドを出発するなり、ものすごい強風なのでレインジャケットを着こんだ。倒れそうになるくらいの強風に煽られ、真正面から風を受けると息が出来ない程だった。本来なら熊笹が広がるなだらかな稜線の向こうに富士山が見える絶景なのだが、雲で富士山は見えず。また、顔を上げてられないほどの強風で景色を見る余裕が無かった。 [caption id="" align="alignnone" width="500"] Photo: Yoshito Katsumata
強風の中、滑走路を進む!![/caption]   強風の稜線を抜けて、50km地点の船原峠を過ぎると距離3km程の長い登りのロード区間になる。既に脚は終わっていてここも満足に走れない状態だった。チームラビット練習なら当然みんな走っている個所だろう。なんとも情けない。このロード区間を登りきると最後のエイドAP3土肥駐車場だが、残りの行動食も残っていたし、これまで遅れた分を取り戻すべく水だけもらったら即エイドを出る作戦にしようと考えていた。
AP3土肥駐車場エイドに到着してボトルに水を入れいたら、先行していた竹さんがいた。突然現れたのでビックリして一瞬緊張した空気が流れる。先ずは1人目に追いついた。水を入れたらそのままスルーする予定であったが、エイドの端にコーヒーを発見。強風で冷えた身体に熱いコーヒーが沁み渡った。コーヒーをいただいて直ぐにエイドを出発した。
●土肥駐車場(AP3) 達磨山AP3を過ぎると再び熊笹と稜線のトレイルに入る。後方をちらりと見ると、竹さんがピッタリと後ろにいてマークされていた。体力的に話せる余裕も無く「キツいっすね〜」と会話をするのが精一杯。下りで離れたと思ったら、しばらくするとまた背後に接近しているという追いつ追われつを何度も繰り返した。元々お互い競い合っていたわけではないが、自分と近い存在の誰かと会う事でより今の自分を意識してしまうのだと思う。この競り合いに勝ったとしても入賞に絡む争いをしているわけではないし、順位が一つか二つ前後しても世界が何か変わるわけでも無い。お互い見ているのは誰でも無く、身近な存在と比較して浮き彫りになる今の自分自身なのだ。現状に満足するか?しないか?自分自身と闘っているのだ。(竹さんのこの時のレポートはROD公式FBページへ) 徐々に最後の登りと言っていい達磨山にアタック。熊笹の稜線をジリジリと攻めて徐々に頂上が近づいて来る。この区間が伊豆トレイルジャーニーで最も景色の良い区間なのだが、必死で登っていたので景色を楽しむ余裕が全く無かった。背後には竹さんの気配が無かった。とはいえ数百m位内にいることはは違いない。 [caption id="" align="alignnone" width="500"] コース最後の大きな登りである達磨山を望む景色。本来ならこの景色だったのだが…
(2012年12月のROD合宿時に撮影)[/caption]   ●達磨山(56km)~修善寺温泉(GOAL/75km) 達磨山の稜線を登っていると急に胃腸の気持ち悪さが晴れて視界がクリアーになるのがわかった。本当にサングラスを外したかのようにフィルターが1枚無くなった清々しさを感じた。暖かいコーヒーが良かったのだろうか?ここに来てようやく不調の底から脱出できた。目前の達磨山を越えればあとは殆ど下りだ。

 「ラストスパート」

達磨山山頂に到着。頂上から下の稜線を見るがコバさんらしき人の姿は全く見えない。この前の段階でだいぶ歩いてしまったので追いつくことは難しいかもしれない。調子が回復したことで緩い登りなら走る事も出来るようになった。下りの脚は残っているのでコケないように注意しながら下りを飛ばして走った。 このレースの週は伊豆地方はずっと天気が良くて、当日の路面のコンディションは良いと予想してシューズはHOKA ONE ONE/STINSON EVOにした。クッションが良くて多くの木段も長いロードの下りも気持ちよく飛ばせて、シューズ選択は正解だった。
達磨山からの下りは選手を抜く事の方が多かったが、達磨山からゴールまでの区間で抜かれたのは2名だけ。その2名はチームラビットのメンバーだった。自分も決して遅いペースではなかったが、70km過ぎてまだそんなに飛ばせるか?!という驚異的な元気さで抜いていった。
長いロード区間が終わろうとしているが、コバさんの姿は見え無いが、もうとっくにゴールしていてもおかしくは無い。虹の里公園を過ぎてしばらくロードを進むと300m程の最後の激坂が見えた。スタッフの方から最後の登りですと励まされる。チクチクと細かく刻んで最後の力を振り絞って坂道を走った。足が攣る限界で頂上に到達。 そこから下りを走って住宅街を抜けてゴールの修善寺温泉街に入った。下りを淡々とマイペースで進んでいると前方400m位にコバさんを発見!まだこちらには気が付いていない。ラストスパートをかけて温泉街を飛ばすも、なかなか追いつかないが、距離がジリジリ縮んで来ていた。ゴールまであと200m…100m...もう手が届きそうな距離まで接近。あと少し!並べる! …と思った瞬間にコバさんがフッと左に曲がって姿が消えた。その先に見えたのはゴールゲートだった。
 「3秒差のゴール」
  コバさんがゴールに吸い込まれていくのを眺めながらのゴール。その差僅か3秒。以下写真がその瞬間を捉えていた。 [caption id="" align="alignnone" width="500"] Photo: Yoshito Katsumata
前方はゴールして安堵中のコバさん。後方は鬼の形相で追っている自分。
これが3秒の距離感。[/caption] [caption id="" align="alignnone" width="500"] Photo: Yoshito Katsumat[/caption] [caption id="" align="alignnone" width="500"] Photo: Yoshito Katsumata[/caption] 終わってしまえば、お互いの健闘をたたえあういつものチームメイトへと戻った。3秒差が悔しいかというと全くそんな事は無く、姿が見えないのに諦めずにラストスパートをかけて3秒差にまで迫るレース展開が出来た事に大きな達成感があった。こういった僅差の勝敗を分ける瞬間というのはテレビでスポーツ観戦している際にしか味わえないものかと思っていたが、一般市民の自分自身が味わえるのだから、そんなトレイルランに益々ハマっていってしまうのだろう。 [記録] 総合136位  /  09時間28分50秒 [caption id="" align="alignnone" width="500"] Photo: Yoshito Katsumata
レース結果を報告。[/caption]  

「まとめ」

10時間以内でゴールし、最後のスパートでなんとか帳尻を合わせられた感があったが、理想としては遅くても始終淡々と進めるレース展開が理想だ。また、これまで自分は走りは苦手でも胃腸は強いと自負していたが、今回は初めて食欲不振や胃の調子の悪い展開を味わってしまった。序盤の高速レース展開と、予想以上に強風による体の冷えの両方が原因であったように思う。そして、チームメンバーとこうして抜きつ抜かれつの展開を味わえると思っておらず、メンバーの成長を嬉しく思いつつも、とうとう油断はしていられなくなった。チーム100マイルでは上から叩かれ、チームRODでも下から突き上げられて板ばさみに合うという、なんとも会社にいるような複雑な思いだ。そういうのが嫌でトレイルランでストレスを発散していたところもあるのだが?(笑)

「大会について」

初めての大会ということもあり、書類送付の不備があったり、レース直前でナーバスになっている選手達の苛立ちから批判も多かった大会だったが、終わってみて思うのは、毎年恒例で挑戦しがいのある中距離レースがまた1つ生まれたということ。
70kmといえば日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)が挙げられるが、ハセツネに出ていつも思うのが、 「各関門にエイドがあればいいのにな」 「できればライトを使わず昼間に走りたいな」 「テクニカルな路面が無く、気持ち良く走れるトレイルで走りたいな」 「森のなかだけでなく、景色が綺麗だといいな」 「家族や友人と手をつないでゴールしても失格にならないといいな」 これらのハセツネに対して思う不満が全て解消されているのがこのITJだ。 とはいえ、水かスポーツドリンクが1.5Lしか出ないハセツネCUPは”山岳耐久レース”だから、ああいったストイックさが面白いわけで、伝統のレースだし今後もあのままでいて欲しい。しかし、同じようなレースは1つで充分。同程度の距離でもエイドが充実していて、仲間や家族の私設サポートも受けられ、美しい景色の中で走れるトレイルランレースは、ありそうで無かった今の時代にマッチした大会が誕生したと言っていいだろう。自分の周囲でも早くも来年のITJに期待する声がちょくちょく聞こえてくる。自分も来年あれば是非再チャレンジしたいレースだ。 [caption id="" align="alignnone" width="500"] Photo: Yoshito Katsumata[/caption]