走れば早く着く。

トレイルラン、オリエンテーリング、登山に関するブログ。

UTMB 2013 (2) Courmayeur - Champex

かなり前回(1)から時間が空いてしまいましたが続きを書きます。今回はクールマイユールからシャンぺ湖までの中盤まで。昨日ちょうどUTMB2014の各レースのエントリーが開始されたので、エントリーされた方は写真を見て妄想にふけってもらえれば光栄です。

[caption id="attachment_1716" align="aligncenter" width="1000"]青線が今回の行程 青線が今回の行程[/caption]

【12】REFUGE BERTONE ~82,4 km

標高1192mのクールマイユールの街を抜けて800m UPの標高1979mにあるベルトーネ小屋を目指す。イメージとしては北丹沢の第二CPから姫次に登るのに似ている。単調なつづら折れの登りをひたすら登っていくが、まだ朝10時くらいで快晴なこともあって既に日差しが強い。この先のUTMB最高地点にあるグランコルフェレに到着する頃には日差しが最も強い時間帯になる事が想像できて気が重かった。途中途中でクールマイユールの街を見下ろせるポイントがありとても綺麗だった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 眼下に見えるクールマイユールの街[/caption]

頂上付近にあるベルトーネ小屋でコーラを飲んで直ぐに出発。そして少し上がるとイタリア側から見たモンブラン(モンテ・ビアンコ )が見えて来た。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] イタリア側から見るモンブラン[/caption]

刺すような日差しによる暑さと疲労とで写真を撮る気になれなかったが、もう二度と来る事は無いかもしれないので立ち止まってモンテ・ビアンコの写真を撮った。4年前CCCに出る為に作ったこのストック。今回のUTMBに向けて新作を作って為す予定もあったが製作時間がとれなかった事もあり、結局4年前のストックをそのまま持って来た。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 自作のRunning Stick "RS-98" モンブランの写真(営業用)[/caption]

このストックの名前はRS-98という名前で、98はCCCの98kmを指すもので、当初は100マイルの強度には耐えられないと思っていたが、これまで八ヶ岳スーパー、UTMFと100マイルレースで使用してき強度は充分とわかっていたので持ってきた。

とはいえ、まだ完走したわけではない。完走して初めて証明できる。既にあって当たり前の空気のような存在ではあるが、自分がゴールを目指すモチベーションはこのストックの存在が大きい。

 

【13】REFUGE BONATTI ~89,8 km

ベルトーネ小屋からボナッティ小屋まで続く約15kmのフラットなコースは、モンテ・ビアンコからグランドジョラスまで3000m級の断崖をズドーンと見通せる景色は圧巻。しかもほぼ平坦でトレイルランナーにとっては楽園そのものだ。しかし、今は景色を見る余裕など無く、コース上の自然の沢を見つけると頭から水をかけ、熱中症と戦いながら進んでいる。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 左手前の山がグランドジョラス。奥に見える山の小さな凹がグランコルフェレ。直線距離で8km程先。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] ボナッティ小屋[/caption]

実はクールマイユールを越えればCCCと同じコースだし、コースを知っているので自分には有利だと奢りの気持ちがあったが、人間4年前の山道を憶えているか?というと憶えているわけが無い。昨日走ったトレイルでさえ、記憶しているようで実はしていないものだ。むしろ過去の曖昧な記憶とリアルとの誤差による脳内の補完作業のおかげで余計に疲れたように思う。今ほど走力が無かった4年前のCCCの時の方がはるかに全てが新鮮で気持ち良く走れていた。 10km程このトレイルの楽園とも言えるなだらかなトレイルを進むとボナッティ小屋に到着。時間は午前11時40分くらい。日差しの厳しさがは増すばかりだった。ボナッティ小屋でコーラを飲んで、次のエイドのARNUVAを目指す。

 

【14】ARNUVA  ~95,0km

正午になるが相変わらず良い天気で雲ひとつない。この暑さはクールマイユールを出る時点で想定していたのでUTMBのオフィシャルショップで売っていた300mlの空のフラスクをデポから持って来ていて、これに自然の沢の超冷たい水を入れて氷嚢のようにして首にあてて走ることで熱中症をある程度抑え込むことができた。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] この雪解けの超冷たい水を浴びながら進んだのである程度は熱中症を抑え込むことができた。[/caption]

ボナッティ小屋からのフラットで楽しかった約5kmの区間が終わり、ARNUVAエイドに到着。これから中盤のハイライトとなるグランコルフェレ(フェレ峠)前の重要なエイドである。暑さでムワッと熱気のこもるエイド内に入る。暑さでいつもよりは食欲が無いが、エネルギーを使うグランコルフェレを前にフルーツやパンを無理矢理お腹に詰め込む。何も食べられなかったUTMFに比べて、今回はまだ食べられるだけマシな状態だった。相変わらず雲ひとつ無く、突き刺さるような日差しの下でUTMB最高地点(2527m)のグランコルフェレを目指す。

 

【15】GRAND COL FERRET ~99,5 km

写真の通りわかってはいたが、全く日光を遮るものがない。氷河から吹いて来る冷たい風があるだけマシだが、日光が容赦なく照りつける。グランコルフェレの頂上を見上げると頂上付近に米粒程の人が歩いているのが見える。見上げる事で「あそこまで行くのか!」という絶望感をより一層大きくするので、今回はレース全体を通して折角の景観なのに3回しか上を見上げ無かった事をしっかり憶えている。グランコルフェレから見降ろす谷の景色はUTMBでも最も美しい場所の一つであることは間違いない。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] "Tour du Mont Blanc" 本来は歩いて周るコースだ。今はオフシーズンでお花も無い。今度はオンシーズンにプライベートで来たい。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 途中で会ったチーム100マイルのヨネヤマさん。来年のWS100の難関抽選を見事引き当てたたラッキーGUY。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 写真では美しいが、見上げると稜線に蟻程の小さな人が見えると「そこまで行くのかよ!」と絶望的になる。[/caption]

4年前のCCCの時もコルフェレで日光にやられて熱中症気味になって、頂上まで1時間40分で通過しているが、今回は登り切るのにちょうど2時間かかっている。休んだつもりもないし、体感的にはCCCより調子良く進めた気がしていたのだが・・・やはりここまで20時間、約100kmの道のりを不眠で進んでいるとペースはこれだけ落ちるのだろう。ここで時間は14時半。まだゴールまで36時間を切れるペースで進んでいる。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] この下りが延々と10km続く。[/caption]

標高2500mのコルフェレ峠を過ぎると、ここから次のエイドであるラ・フリまで約10kmの長く緩い下りが続く。元気があれば声をあげて走りたくなる極上トレイルなのだが、そんな気力も体力も無くただ淡々とゆっくり下ることしかできない。5kmを過ぎるとトレイルの途中では何人も日影で寝転がって休んでいる選手がいた。みんな暑さと眠気にやられているようだった。そして長い長い下りを終える舗装路に出てると地元の人達からの多くの声援を受けてエイドのラ・フリに到着した。時間は16時半。下りで10kmなのに2時間ほどかかった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 途中にある名物の私設エイド。白いパオが目印。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 大会中、水が出っぱなし。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] DVD激走モンブラン2011で鏑木選手がコケた石(コーナーに見える白い石)。この160kmに及ぶ長いコースでは直角コーナーがあまり無くて、それで調子が狂って転んだと思われる。何度も観ているので現場に行くとそういうのが発見出来て面白い(笑)[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 2009年の同じ町での写真。4年前の子ども達と似てるけど違うかな?[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] ラ・フリのエイド[/caption]

ラ・フリのエイド内は疲労を隠せない選手達が並んだテーブルにまばらに座って、ボーっとしている。自分もその中の1人だった。反対に応援の人達はやけに元気だった。食事がのどを通らず、UTMFの苦い思い出が蘇り初めていて、このレースで初めて「リタイアしたい」という気持ちの方が大きくなっていた。時間を見ると36時間台のペースで進んでいたが、もうこのペースを維持できないとわかっていて下方修正せざるを得なかった。しかし、ここに長く居てもしょうがないので、休むなら次のシャンぺ湖で休もうと思い気持ちを奮い立たせてエイドを出た。エイドを出ると夕方の光に変わっていて、気温も若干下がっていてなんとか行けそうな状態になった。ここからも川沿いに約10kmの長い長い下りの林道が続いて下り切った後、約5kmで600m UPの登りを上りきると大エイドのシャンぺ湖に到着する。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] モンテ峠までの最後の写真。もう写真を撮る気力が無くなっていた。[/caption]

林道を下り切って、シャンぺ湖に向かう上りがスタート。気温が急に落ちてきて体が冷えてたせいか、今度は今まで味わった事が無い強い眠気に悩まされた。2009年に参加した日本人の多くがこのシャンぺ湖の前後でコース上で寝ていた為に強制リタイアとなった事例があったので、寝たいのを何度も我慢してフラフラになってきて、5分で進めるところを10分くらいかけて進むような状態になった。あと少し、あと少しと念仏を唱えながらシャンぺ湖を目指した。

【17】CHAMPEX-LAC ~123,6 km

時間は夜の19時。なんとかフラフラになりながらシャンぺ湖に到着。moto君に迎えられた瞬間、「とにかく20分眠る!」と言って、仮眠室へ直行。仮眠室には人が沢山いると思ったら割と空きがあった。10cm程のマットレスに薄い毛布が敷かれていて、とにかくそのまま眠るも、眠たいのになかなか寝付けない状態だった。そのため20分が40分になり、ようやく10分くらいだけ眠れて結局仮眠室に1時間程滞在してしまった。その後に食事をしたのでトータルで約1時間半ほど滞在してしまった。ゴール目標を38時間に再設定して20時40分にシャンぺ湖を出発!

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 仮眠を経て、大復活なるか?![/caption]

UTMB 2013 (3)  Champex - Chamonix へ続く・・・(年内には書きあげます!)

チーム100マイル:ラビット日記(4)

久々のラビット日記です。 (チームトータスとは指導内容が違うので混同無きよう)

今回はチーム100マイルの「飴」と「鞭」について書きます。

まずは「鞭」から。

遡ること今年の夏。

チーム100マイルはいつもの鎌倉を離れて富士山の御殿場口に集合。

鬼のマッカーサー元帥コーチが現れました。

本日のプランは富士山の御殿場口から砂場走の登り坂を複数回往復(距離と数は失念)午後からは御殿場口から宝永山を経由して御殿場口に戻るプラン。基本、登りでの歩きはナシ。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 普通に歩いてもズルズルと滑る砂利。そこを走ることで体幹や登りの効率的なバランス感覚を鍛えるのが狙い。[/caption]

やはり安定の最後尾なのだけど1歩も歩かなかった!半年間の成長を感じられるも・・・午後の宝永山ランでは緩い登りなのに脚が上がらない。列からどんどん遅れをとっていく。これまでのセミナーではギリギリのところで何とか踏ん張っていたのだが・・・

「君、ここで帰っていいから」

とうとう喰らってしまった「肩叩き」。

というわけで1人で来た道を帰るのであった。

そして次は「飴」。

8月。

チームラビット&トータスの安達太良山合同合宿。 今回は初日20km、2日目も24kmほどで、距離はいつもの鎌倉の半分以下。 いつもとは反対のゆるゆるのファンランイベント。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] トータスと合同練習の安心感。後ろに誰かいるってイイね(笑)[/caption]

みんなでワイワイそれぞれのペースで走る。もちろん歩いてもOK。

そして宿では朝も夜も秘湯での天然温泉三昧。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 硫黄の匂いが身体から3日間抜けなかった程の高濃度の天然温泉。[/caption]

そして、大宴会。この日はアルコールやカロリー制限というキーワードはナシ! 富士登山駅伝のレアな映像を本人の解説で観られるのもチーム100マイルならでは。

チーム100マイルの「飴」はとろけるような激甘スイーツだった。 ホント、楽しかった。2013年の夏は甘い記憶として残る夏となった。

というわけで、チーム100マイルの代表的な「飴と鞭」の一部を紹介。

チーム100マイルに入って一番得られたものは、完走できるかどうかわからなかったUTMFもUTMBも両レース中で最も心が折れそうになった時に、

「チーム100マイルの練習より楽だ」

と思えた事(笑)

このように精神的にタフになれたことが一番大きかった。そして、体力的にもここが限界と思っていた壁の向こうにまだ先があった事を教えてくれたこと。

さらに、何よりもいっしょに頑張れる仲間が増えた事が一番良かった。レギュラー争いもないし、先輩後輩の上下関係も無いし、みんな酸いも甘いも経験した良い変態大人達が集まっているので雰囲気が良い。厳しくもあり楽しくもある「理想の部活」の姿がここにあった。

そんなチーム100マイルが第二期の募集を開始。〆切は12月27日まで。

2014年、この飴と鞭を味わってみませんか?

草レースやろうぜ!! MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA(4)

朝6時。大会本番の朝が始まった。

約1時間程かけてスタート地点へ向かう為、40台ほどの自家用車で大移動。スタートするウェーブ順に移動する為、乗って来た車とは関係ない者同士が相乗りとなる。リハーサルが出来ない一発勝負なのでクルー達は朝から緊張感が走る。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 選手を車に誘導するクル―。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] クル―とは反対に選手達はいたって和やか。[/caption]

一方、エイド班は50人分の水と軽食を背負ってコース中間地点の姫次に向けてボッカを開始。 撮影班もスタンバイの為移動。朝からテンション高い! もう一方、コースクルーは既に前夜に出発していてスタート地点付近に泊まり、夜明けとともに行動を開始。トップ選手通過の前に自分のポジションへ向かう。朝で水が冷たいのにみんな楽しそう。

 

午前7時30分。 選手がスタート地点に集結するが、気温は10℃以下。薄着なのでかなり寒い。

午前8時。 定刻通り第1ウェーブの選手が元気にスタート!トレイルへのインパクト、ハイカーとの接触や渡渉や鎖場での渋滞を避ける為にウェーブスタート式とした。1ウェーブ10人を10分間隔で5回繰り返した。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 続いて2ndウェーブスタート![/caption]

最終ウェーブは見る人が見ればわかる面々。本来は20kmのショートレースには絶対出ないであろう選手がいたり異種格闘技戦となった。 https://www.youtube.com/watch?v=bCVzUw27E-I

 

コースクルーによる沢サポート。とはいえ基本は必要あれば手を貸し、もし流されたら救助するという放置スタンス。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] ソックスを履き替える戦略の選手。[/caption]

 

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 道なのかどうなのか?わからない所を進む。走りやすい場所を素早く探し出すこともマウンテンスキルと言える。[/caption]

写真は無いが、沢セクションの後は斜度70度の直登セクションを越え、踏み跡の薄い尾根のバリエーションルートを進む。終わりそうで終わらない、いやらしい登りが続く。

1時間以上かけて稜線に出てもまだ距離5km程。しかし、キツイ登りの後なのにみんな笑顔!

天候に恵まれ、クルー待望の念願の富士山は見えた。しかし、本当に見たかったのはこの笑顔だったんだ、と写真を見て気がついた。笑顔に勝るものは無い!

写真は無いが、蛭ヶ岳を過ぎるとブナ林の緩いアップダウンの極上トレイルが3kmほど続き、その後姫次に到着。姫次ではエイド班によるエイドを展開。水、コーラ、クリフバーなどなど。温かい昆布茶も好評だったとか。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 姫次エイドを発つ選手達。居心地が良くて10分程滞在する選手が何人もいたとか。[/caption]

「一方、この楽しそうな雰囲気の裏側では…」

以下は敢えて触れておきたい。8:40分に最終ウェーブの選手のスタートを見送って、本来ならゴールで待っていても良いのだろうが、自分がレースに出ても必ず「まさか」の事態が起こる。50人も出ていれば、「50人分のまさか」が起こるということだ。前半の沢エリアはサポートが厚いのでクルーにまかせて、ショートカットコースを使って上位選手の先回りするようにコース中間地点の姫次に向かった。天気に恵まれて、ジャケットが要らないくらい暖かく、沢で濡れても低体温症の心配はほぼ無いだろうと半ば安心していたのだが...

姫次エイドに到着する手前でクルーから電話が入り、コース14km~15kmの区間で害獣駆除の為、ハンター約20名程が鹿追い包囲網作戦をおこなっているとの情報が入り、即現場にかけつけると、山中のあちこちで猟犬が吠え、発砲音が鳴り響く中を選手達が通る状況となっている事に青冷めた。しかし、チェックポイントのクルーが機転を利かせてくれたおかげで、ハンターたちに選手が通る情報が伝わっており、ハンター達はトレイルと弾が交錯しないように、トレイルに背を向けて銃を構えていた。しかし、1名の選手がコースをロストしたのを発見したので、他のクルーに迷いやすいポイントのコースマーキングを追加してもらった。そして、コースを通りながらハンター1人1人に事情を説明をしてまわり、安全であることを確認できたので連絡をしてくれたクルーと合流して情報交換をした後、そのままゴールへ向かった。その途中も野鳥愛好家がコース付近で写真を撮っていて、これまで雨でも晴れでも何回も試走をしても会うことが無かった新キャラがなぜかこの日に続々と登場。やはり「まさか」は当然ながら意外なところから現れる。

そして、野鳥愛好家の方にも状況を説明しつつゴールに向かっていた時に、今度は1名の選手が血尿が出たとの報告が入った。姫次の医療班の適各な状況報告から選手の意識はしっかりしており、走れる状態だったためクルーの並走サポートを付けてゴールまで来る対応をおこなった。

こうしてアクシデントに対応をしながらゴールに戻ってひと安心していたのだが、最後になって最終ランナーがコースロストしたという情報が飛び込んで来た。しかし、スイーパークルーの的確な判断によって、迷った経路を予測して早い段階でロストした選手を発見でき、再びコース上へ選手を戻すことができた。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] スイーパークル―の面々。OMM Classic Marathon 25Lパックでお揃い。[/caption]

このように楽しそうな笑顔の裏舞台では様々なことが起こっていたのだ。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] ハイカーの付近では歩く選手たち。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 力強い走りを見せてくれた100マイラー"tomo"[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 5か所のチェックポイントがあり、ゼッケンにチェックを入れられるようになっている。MC1と同様のシステムを真似た。[/caption]

そして選手が続々とゴール!

ゴール後のお楽しみは、ヴィーガンパワーフードで知られているULTRA LUNCHによる丹沢の酵母で作られたパンと身体が温まるスープでおもてなし。身体の中からも丹沢を味わってもらおうという配慮が素晴らしい!

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 一緒に主催したTRAIL TOBAのリーダーであり、ULTRA LUNCH代表のdomingoさん。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] MC2アイコンの甲斐犬ロッキー。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] ゴールすれば選手も応援側へ。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] そして、最終ランナーがゴール!この日一番の盛り上がりとなった。[/caption]

大きな怪我も無く、出走者全員が完走!! この時の安堵感といったら例えようが無い程の感覚だった。

閉会式&表彰式の様子。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 男子優勝(MOUNTAIN KING)はTJAR2位で注目された阪田さん(中部東海:ANDTAR)。2位はカチョー(芦屋:MRHC)、3位にタクさん(芦屋:MRHC)と走力がありマウンテンスキルも高い強い面々がトップ3に並んだ。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 女子優勝(MOUNTAIN QUEEN)は竹本さん(静岡:FUJIYAMA UNITED)頭上ピースが流行るか?2位はノリコさん(芦屋:MRHC)、3位はJUNさん(芦屋:MRHC)。[/caption]

選手とクルーとで記念撮影をして閉会となった。

しかし、大会はまだ終わっていなかった。最も遠い場所から帰って来るクルーを待つ。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 再び盛り上がる![/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] そしてクル―全員もfinish!![/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] TRAIL TOBA とROD。5ヶ月間の準備、おつかれさまでした!![/caption]

これにてMOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWAは終了。

 

『まとめ』

当初は関東でマウンテンサーカスに適したコースを提案できるだろうか?自分だけではなく関係者全員が不安を持っていたが、コース選定で何度も丹沢の山を訪れる毎に魅力的なロケーションが沢山あることがわかり、そして、

「自分が楽しいと思うコースに、いろんな人を誘って楽しんでもらいたい」

と思えるようになった。ここに到達するまでにはいろいろあったが、最終的にはマウンテンサーカスの掲げるローカリズムに上手く着地できたと思う。

しかし、これが実現できたのは、チーム内に山が好きで、普段から沢やクライミング、バリエーションルートを楽しんでいる仲間達がいたからこそだ。

また、もう一つの大会のコンセプトである「コミュニケーション」も、普段からキャンプをしているメンバーがチームにいたこと。そして、山の食事に慣れたハイカー女子メンバーらとうまく連携して、寒空でも暖かくて楽しいキャンプスタイルの前夜祭を演出することができたからこそだ。

もともとレースを開催するために集まったチームではないのだが、それぞれの得意分野のスキルを集めると一つのイベントを開催して、多くの人を楽しませることができるという事がクルー各自が目に見える形で味わう事が出来たのは大きな収穫だったと思う。

そして印象的だったのは、大会全体を通してクルーのほぼ全員が「作業」にならず、自身も楽しんでいたことだ。その気持ちが大会全体に伝搬したことで、選手も始終笑顔のアットホームな良い雰囲気が作れたのだと思う。

反省点としては山ではハイカーだけではなく、ハンターや野鳥愛好者など様々な人達がいるということをもっと事前に調べなければならなかった。この点は素直に反省し次回に活かしたい。

マウンテンサーカスは今後も各地のどこかで開催されるだろうし、個人的にはこんな楽しい事をもっと多くの人と共有したいと思うのだが、これまでの記事を見てわかる通り、誰もが参加できる内容ではないのと、一般参加枠を増やせば、今まで突っ込めなかった領域のエッヂを丸くすることになり、そうなると既存のトレイルランレースと何ら変わらなくなるジレンマが発生する。少人数だからこそできる個性的な大会というのもあって良いと思う。

しかし、いろいろなトレイルランチームがローカルで大小の草レースを開催するようになれば、もっと全国のランナー同士の横のつながりも活発化するだろうし、各ローカルの個性を活かした魅力的な草レースが生まれて行くと思う。欧米では元々は草レースがメジャーレースに発展していった背景もある。また、既に国内でもいくつかの草レースが何回も開催されている。今回やった事は何ら特別な事ではない。もし来年、新たな草レースが開催されたらタイミングが合えば是非伺いたい。

最後に今回の大会をギュッと凝縮した撮影班が編集したVideoを紹介して終わります。選手とクルー、そしてサポートしてくれたスポンサーの方々、そして丹沢の山々に感謝!

http://youtu.be/p3PG5hvWXYI 草レースやろうぜ!!MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA (完)

(blog内の写真は全てMC2撮影班とコースクルーが撮影したものを使用しています。)

草レースやろうぜ!! MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA(3)

5ヶ月間の準備期間を経ていよいよ大会当日となった。前回までは緊張感あり真面目な内容であったが、大会当日はそれらは全て忘れ、始終フレンドリーで楽しい雰囲気であったことは以下の写真を見て伝わるはず。(以下の写真は全てMC2撮影班によるもの)

レースの前日はメジャーレースのようにコースブリーフィングと前夜祭がおこなわれた。ホールにてコースクルー向けと選手向けのコースブリーフィングをおこなった。受付、賞品やゼッケン配布などレース会場では良くある風景だが、中身を間違えないように気を使うなど自分たちでやると、いちいちその大変さが良く分かる。

[caption id="" align="alignnone" width="375"] 受付準備風景:選手50名分だけでも大変さがよくわかる。[/caption]

クルー向けの最終ブリーフィング。みんな真剣に自分の作業を確認。

クルー向けキャップ。寒い時期なのでTシャツだと上着の中に隠れてしまうのでキャップにしようという案がクルー内から意見が出て採用された。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] ロゴデザインはWeb班のデザイナーとRBRG桑原さんが担当。いくつかのロゴデザイン候補の中からこのデザインが選ばれた。[/caption]

 

コースクルーが持つファーストエイドキットの配布。医療品以外にエマージェンシーシート、発煙筒もある。

 

また、関東チームらしい目玉としては参加賞品はオリジナルシューズサックが用意された。今年ガレージブランドとしてデビューしたROD!!所属のWANDERLUST EQUIPMENTOgawandをはじめ、Gコ山Jindaiji Mountain Works、そして既にガレージブランドと言えないPaagoWorksの協力のもと、ブランド別に違う形やギミックのオリジナルシューズサックがランダムに入っているというお楽しみ。どれも軽量で使い勝手の良い非売品シューズサックは上記ブランドのタグが着いているものもあり、もし将来これらのブランドがブレイクした際にはかなりレア物になるはず。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] ありそうで無い機能性がありカッコいいシューズサック。しかも軽量。自分が出たかった![/caption]

そしてレース前日の昼の12時より受付開始。

全国から続々と選手が到着。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] チームウェアでキメて来たMRHCの面々。[/caption]

15時40分より開会式&選手向けのブリーフィング開始。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 和やかな雰囲気の中、実行委員長のジョーさんから開会の挨拶。[/caption]

この日に初めて明かされるコースの資料を真剣に眺めている。今回は関東選抜チームもあり、公平さを維持するためにコース発表はレース直前まで非公開としていた。(高低図は事前に発表していた)

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 初めて明かされるコース説明に真剣に見入る選手達。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] そして今回もマウンテンサーカスお約束のこのコピーでコースブリーフィングは〆。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 開会式&コースブリーフィング終了。[/caption]

 

一方、コースブリーフィングの裏で、会場班により前夜祭の準備が着々と進められていた。とんがり屋根の「Tentipi」をアイコンに、廃番となったMSRの大幕「パビリオン」が2幕など、まるでサーカスのようなテント村が登場。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 見た事も無いキャンプギアがどんどん出て来る。テーブルやチェアは自作のものもある。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] そして女子クルー達による美味しいおつまみが手際よく作られ、大皿に並べられていく。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 普段山で食べているキャンプ料理に一手間加えて上手くパーティー料理にアレンジしていた。[/caption]

 

18時 前夜祭がスタート!選手やクルー併せて100名が続々とテント村に集まってくる。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 準備万端で余裕すら感じさせる会場班たち。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 芦屋MRHCのbeyondさんによる選手宣誓と乾杯の音頭にて前夜祭スタート!![/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] moonlight gear代表の千代田さんと会場班を仕切ったコッシー。場所が得意のアウトドアということもあり司会トークも冴える。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 中部東海から「AND TAR」。わかる人にはわかる人達がチラホラと。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 愛媛県「ISHIZUCHI TRAIL RUNNERS」。お土産は甘くて美味しい愛媛みかん。ゴールにて美味しくいただきました![/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 京都 「Dibs On」。MC1で優勝者を排したチーム。今回はどうなるか?[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] UTMFのボランティアでお馴染みの静岡県「フジヤマユナイテッド」。定評ある強い団結力はMC2チーム戦でも発揮されるか?[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 新潟「DAIGO!」。MC1ではリーダーのソロ参加でしたが、今回は3名参加。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 岡山県から「チームおおてまんぢゅう(仮)」。MC1に続き今回も参加者全員に岡山名物の大手まんぢゅうをお土産にいただきました![/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 関東選抜。すぽるちば、DMJ、IBUKIの代表者とサンダルランナーらが参戦。関東(ホーム)の意地をみせられるか?[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 前回のMC1ホストの芦屋「Mt.ROKKO.HARD.CORE」は19名が参戦。今回は次世代を担う若手がスピーチ。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] そして"ちん"客の乱入で会場は異様な盛り上がり![/caption]

 

基本スタンディングで焚火を囲んでいるので、夜の雰囲気と素晴らしいお酒で東西南北の選手同士のコミュニケーションはバッチリ。普段SNS上では交流があっても、直接会うのははじめてな人も多かった様子。同じ趣味の人たちが集まっているのだから楽しく無いわけがない。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 焚火を見ながら話すと、初対面でも話やすい効果がある気がする。だからキャンプは楽しい。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] トレイル鳥羽ちゃんのクルー達。ゴールテープも手作り。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] ホットワインが大好評。普段あまりアルコールを飲まない自分もかなり飲んだ。[/caption]

そしてジャンケン大会での賞品争奪戦で会場はこの日一番の大盛り上がり。ショップオーナーの参加が多いだけにメジャーレースを驚愕する素敵な賞品の数々。賞品提供をいただいたスポンサーの皆さまありがとうございます!

[caption id="" align="alignnone" width="500"] エントリー代を上回る最新ギアが続々と。正直出たかった!(再)[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 中は〆のラーメン。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 翌日の天気は良さそうな気配。[/caption]

翌朝早いのに選手は23時くらいまで居た様子。そして、コースクルー以外のクルーは朝4時まで飲んでいたとかいないとか?

⇒そして次回は大会当日編の(4)へ

草レースやろうぜ!! MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA(2)

・・・「草レースやろうぜ!」MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA(その1)からの続き。

「大きな問題点」

まず関東は都心から山が遠く、必ずしもアクセスの良い場所に良いロケーションがあるわけではないということ。そして、メンバーの住まいもバラバラでチームも違うし、こういったチームの団結力が問われるイベントがやりにくい環境にあった。

なので、先ずはチームの垣根を取っ払って、両チームメンバーをごちゃ混ぜにしてコース班、会計班、医療班、会場、前夜祭班、賞品班、エイド班、計測班、交通班、撮影班、WEB班など各セクションにリーダーを立てて小さなプロジェクトに分けてそれぞれが独自に動けるようにした。そして、facebookのグループ機能を活用して情報交換をして離れて住んでいる欠点を解消した。そして毎月一回、岩本町のOne drop cafeで定例会議を開いて、各班の懸案事項を持ち寄ってその場で決定していくという何だか会社みたいな事をしていた。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] MC2定例会議の風景@One drop cafe[/caption]

そして、もう一つの肝心のコースの問題。地理的な問題は場数を踏むしかない。個人的な話となるが、UTMB準備、チーム100マイルの練習や大会日程以外の週末は全てMC2試走の予定を入れた。

 

「なぜ丹沢なのか?」

先ずはコースが決まらないと何も決まらない。プロジェクト内では丹沢じゃなくてアクセスの良い高尾や奥多摩でも良いのではないか?という熱い議論をする場面もあったが、南高尾や奥多摩ではトレイルレースをするコースはとれるが、マウンテンスキルを問われるマウンテンランニングレースとしてのコース設定が難しかった。また、ハイカーとの接触をなるべく減らす為に、人気(ひとけ)の無いエリアを選ばざるを得ないのだが、奥多摩や高尾や表丹沢では紅葉の季節には登山道に行列が出来るほどなので除外した。

そのため、東丹沢エリアに目を向けると、このエリアはヒルの群生地帯ということもあり人気(にんき)がないので交通の便も開拓されておらず、自然の姿が残っているバリエーションルートや沢が豊富にあることがわかっていた。そして11月は寒くてヒルは出ないのでその時期なら選手やクルーがヒルの被害に合う可能性が低い。この山域を使わない手はないと思い、コースの山域をこのエリアに絞り込んでいった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 試走風景:コース試走クル―は何人もヒルの餌食となった。ヒルの吸引力はもの凄く強くて、手で引っ張っても簡単に取れないのでヒル撃退スプレーは必須だ。[/caption]

 

「関東の山にしかに無いものとは?」

あくまで個人的な意見だが、ぶちゃけ関東の山は普通すぎてどうやっても地方の山には景色やワイルドさで負ける。しかし、地方の山になくて関東の山にあるのは「富士山」だ。丹沢の稜線から見える富士山はいわば「関東のキラーコンテンツ」(笑)になることは間違いなかった。ただし富士山は天候に左右されるので見えればラッキーで、富士山が見えない場合でも十分楽しめるコース作りを目指した。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 試走風景:10回以上足を運んで富士山が見えたのは3回ほどだった。この時は雨なのに珍しく富士山が見えた。[/caption]

 

「改めてマウンテンサーカスの基本思想に戻る」

せっかく地方で草レースに参加するなら、その土地の人にアテンドしてもらわないと行けないとっておきの場所に行きたいものだ。MC1でもそれが嬉しく、楽しかった。裏丹沢には早戸川の渓流の奥地に日本滝百選の幻の滝と呼ばれている「早戸大滝」があり、何度も渡渉を余儀なくされるので行くのが大変なのが幻の滝と言われる所以だが、関東以外の人なら尚更アテンドしてもらわないと行こうとも思わない場所と言えるだろう。また、早戸大滝に至る約2kmの沢は沢ヤにとっては簡単すぎる沢(沢装備無しで進めてしまう)なので、この「とっておきの場所感たっぷりの滝」と「ハードコア過ぎずイージー過ぎ無い」この沢セクションがマウンテンサーカスにピッタリだと思い、ここをコースに組み込み、富士山が見える稜線とを繋いだことで一気にMC2のコース具体案がまとまっていった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 試走風景:このように広い沢なので川の横を通って進むことができるのが、沢ヤには物足りない点と言える。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="375"] 試走風景:落差50mの早戸大滝。危険個所もあるので必ず山に慣れた人と行きましょう。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="375"] 試走風景:今回のコースでは通らなかった雷滝。当初はこちらを通る予定であった。個人的には雷滝の方が好きだ。まだまだコース開拓の余地はある。[/caption]

こうして、沢あり、滝あり、バリエーションルートあり、急登あり、ブナ林あり、富士山が見える極上トレイルありと、距離20kmの中に山の要素をギュッと濃縮した良い意味で「関東らしくない」ハードなマウンテンランニングコースが完成した。距離は20kmだが、累積標高は約1900mもある。体感的には30km~35kmくらいに感じるハードなコースとなった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 試走風景:丹沢のバリエーションルートには優しい雰囲気のブナ林が多く存在している。[/caption]

そして出来るだけクルーにコースを試走してもらいたくて、9月、10月はほぼ毎週のように試走会を企画してクルーをコース試走に連れて行った。いろいろなスキルの違いがある人が参加していたので、コースタイムや関門時間決めの参考にもなったが、選手と同じコースをスタッフも走っていることで「大会の一体感を上げる」ことが狙いだった。これはMC1から学んだ重要なポイントだ。そして、クルーを試走に連れて行くとみんなの反応が良く、コースレイアウトに手応えを感じていたが、11月で水温が10℃にも満たない冷たい水の沢に選手やスタッフを渡渉させるか?については大会当日のスタート直前まで葛藤があった。面白さとリスクは常に表裏一体だ。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 試走風景:透き通った沢。夏は気持ち良いのだが、大会当日は晩秋。水温は10℃を下回る。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 試走風景:想定しいたコースが崩落していて、コース変更を余儀なくされる場面も。[/caption]

 

「安全対策」

ここからがようやく今回の核心の話と言える。選手のblogなどからは、単にハードなコースを何の対策もなくゲリラ的に楽しんでいるだけの大会と受け止められなくもないのでその点について触れたい。

大会の基本思想は「オウンリスク」とはいえ、何の対策もせずオウンリスクと言い放つのは違うと思っていた。MC1では現役の看護士でもあるMRHCのメンバーを中心にコースクルーへファーストエイドの講習をした上で運営されていた。MC2ではチーム内にいる現役医師によって全スタッフ向けに安全講習をおこなった。

「救助のプロが来るまでに素人の我々に出来る事は何か?」

を知った上でコースクルーがファーストエイドキットを持って大会当日に山に入っていたのだ。

 

「怪我よりも恐れていた事」

怪我は山のアクティビティだから当然あるとはいえ、たとえ骨折しても人は直ぐに死ぬことは無いが、「低体温症」になったら人は簡単に死ねる。まして10℃も満たない気温で沢を通るなら怪我よりも低体温症の対策をすべきと医師からのアドバイスを受けて、沢セクションのクルーの強化と、大会の必須装備に着替えや替え靴下を加える対策をおこなった。もし沢で滑って全身が濡れても、その場で即着替えれば低体温症の危険性がかなり下がるからだ。そして、ROD!!には沢ヤが4,5人いて、特に水深の深い渡渉ポイントにその沢ヤを配置し、基本は放置だが選手の状態を見て必要であればロープを渡し、万が一選手が流されても救助できる体制を組むことができた。さらに沢セクションにマーシャルクルー並走させて全部で大小9か所ある渡渉ポイントの監視をおこなった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 試走風景:雨天時の調査の為、敢えて雨の日に試走をおこなった。天気予報の降水量をチェックしておき、雨天決行する際の判断材料とした。自然のストックを利用する渡渉もスキルの一つだ。[/caption]

次にクライミングセクションの対策だったが、ここは約50m程の高さで斜度70%程の急セクションで、ここはROD!!にはボルダラーがいるので彼らを監視員として配置した。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 試走風景:斜度70°の直登セクション。ロープを使うか?岩場を登るか?その人のマウンテンスキルによって選択ができる。[/caption]

[caption id="" align="alignnone" width="375"] 試走風景:女子でも容赦なく厳しい直登ルートで藪こぎする場面も。[/caption]

そして、大会の当日はゴールに医師と看護士に待機してもらっていた。

また、最悪ヘリを呼ぶ可能性もあるので選手とスタッフ全員にイベント保険をかけた。チーム内に保険会社に勤務するものがいるので、安いながらしっかりとした保険プランをカスタマイズできたのは助かった。

医師、看護師、医学療法士、沢ヤ、ボルダラー、保険屋と、何かしらその筋に長けたメンバーがROD!!とTOBA両チームにいて人材的にとても恵まれていたことで、アマチュアができる限りの安全対策対策を構築することができた。

このように両チーム内にとても頼もしいメンバーがいたからこそ勇気をもって沢の渡渉と、斜度のある危険なクライミングセクションをコースに組み込む決断が出来た。彼ら無しでは今回のコース設定は不可能だっただろう。

 

「交通の問題」

安全対策の次に頭を悩ませる問題であったのが、当日の大会スタート地点に自家用車を使って50人の選手を送迎することだった。バスを借りれば一発解決なのだが、低予算の草レースだけにバスをチャーターする予算は無い。そこで選手とクルーの自家用車を使って選手をスタート地点へ送迎することにしたのだが、運転手も選手だったり、駐車場が少なかったり、複雑な選手送迎のプログラムを組んだ。また、この山域は携帯電話が通じないので迷ったら終わりだ。これは鳥羽ちゃんの大倉さんが一手に引き受けていたのだが、複雑パズルのようなシフトだったにも関わらず、見事に定刻通りに最終ウェーブの選手がゴールラインに並んでいるのを見た時には本当に感動した。まるで電車の時刻表を作る「スジ屋」のようだった。

[caption id="" align="alignnone" width="333"] 乗車整理券。レース当日は整理券の番号の車に乗るように準備していた。[/caption]

 

「webサイト」

上記で書いたが事前にイベント保険に入ったり、ファストエイドの医療品、スタッフ用キャップ、参加賞品の用意や前夜祭の用意などがあった為、資金確保の為に公式ページから事前入金にしてもらい、併せてエントリーの際にイベント保険加入に必要な選手の情報や自家用車の有無を記入してエントリーをしてもらうことにした。これもチーム内のwebデザイナーとwebエンジニアによって自前のシステムを組んでもらった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 大会Webサイト:RokkoからTANZAWAへバトンならぬボトルを渡すイラストが好評だった。ボトルは今年話題になったSimple hydrationがモチーフになっている。[/caption]

その他、会場/前夜祭班、賞品班(参加賞品を自分達で作った)、タイム計測班、エイド班が事前準備をしていたが、これらはこの次の大会編で併せて紹介したい。

こうして5か月の準備期間を経て大会当日を迎える事となった。

⇒「草レースやろうぜ!」MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA(その3)へ

草レースやろうぜ!! MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA(1)

お久しぶりの更新です。

だいぶ長い間blogを更新できなかったのは、各所で目にしているかもしれませんが「MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA」(MC2)の実行委員をしていたので、自由時間はそれに携わっていたからでした。blogとしてはUTMB後半編やチーム100マイル話などが残っていますが、先に今回のMC2について書きます。

既に各所で素晴らしくまとまったレポート(REPORT参照)があがっているのでそちらを参考にしてもらいつつ、自分は今回のMC2では全体的なプランニングとコースディレクターを担当したので裏方目線のドキュメンタリー的な内容を書きます。かなり長いので4編に分割し、まずは最初の2編をアップ。

「ことのはじまり」

遡ること2012年6月。ROD!!がチームらしくなってきた時に、MYOG(Make Your Own Gear)メンバーの多いRODが、「今度は道具じゃなくてトレイルランニングレースを作ってみようぜ!」というムードが盛り上がり、ちょうどお世話になっているLOCUS GEAR代表のジョーさんが相模原にファクトリーを移して、個人的に南高尾周囲のトレイルを積極的に走っていて、地図には無い良いコースがあるとの情報を得てジョーさんとチームメンバー10人位で試走に行った。走りやすいトレイルあり、地図に無い荒れた廃道もありの20kmのコースがとれることがわかり、ここでレースを開催しようという事になり準備を進めていた。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 南高尾コース試走風景(2012年7月)[/caption]

先ずは正面切って市役所に問い合わせたのだが、窓口をたらい回しされた挙句、結果トレイルランニングレースなるものを許可する窓口が無かったというオチが待っていたのだ。地方の村興しや地域復興の一環としてトレイルランニングレースを開催するなら、村長や市長のサイン一発で大義名分で開催となるのだろうが、アマチュアでよくわからない団体がやってきていきなり許可を得るというのがはなから間違いだったのかもしれない。また、自分たちの切込み方が間違っていたのかもしれない。(別の窓口を使えばすんなり許可が得られたのかもしれないが、これについては今後調べる予定だ)

さらにスタートゴールの会場の確保も困難だった為に開催がとん挫してしまった。そして、ちょうどその時に芦屋SHMW代表のタクさんも時同じくしてレース開催構想を持っていたらしく(参照)、では一緒にやりましょう。どうせやるなら、これまでのトレイルレースとは違う内容にしようという話になった。

「これまでのトレイルランニングレースと違う点」というのは、通常のトレイルラン二ングレースでは比較的安全に走れるトレイル上に、迷いようが無いくらい沢山のコースマーキングをおこなって怪我や遭難のリスクを減らしてきた。安全なレースをすることは運営と参加者にとって相互にメリットのあることだし、それについては全く異論は無いが、登山スキルが不要なのでそこに物足りなさを同時に感じており、どうせクローズドでやるなら参加者のスキルも把握できているし、地図読みやルートファインディング、岩場や川の移動など、山で必要なスキルを問われる「マウンテンランニングレース」にしようというコンセプトとなった。

でもこれってアドベンチャーレースと何が違うの?と思うかもしれないが、アドベンチャーレースはMTBカヤックを使ってチームを組んで数日かけるレース形態で、こちらは自走でソロがメインなのでアドベンチャーレースと区別するために、我々は「マウンテンラン二ング(レース)」と呼ぶことにした。

そして、この大会をローカルの山を自慢し合うように、各地をサーカス団のように巡るスタイルにして、横の繋がりの交流の機会を増やしていくことをもう一つのコンセプトとし、2013年2月の商談会で東京に集まった全国のトレイルランニングショップオーナー達とともに、「マウンテンサーカス」が立ちあがった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] Mountain Circus Kick Off!! @One drop cafe (2013年2月)[/caption]

では、第一回はどこで開催するか?関東はまだコースが未確定だったこともあり、すでにMRHC(Mt.Rokko Hard Core)がトレイルを熟知している六甲山で今年6月に第一回を開催することになり、第二回は11月に関東でおこなうことが最初のミーティングで決まった。

既に報告()があるように、六甲山でおこなわれた第1回マウンテンサーカス(MC1)はコースもホスピタリティもクオリティが高く最高に楽しいものだった。

[caption id="" align="alignnone" width="500"] 第1回 MOUNTAIN CIRCUS "Mt.Rokko Hard Core 20K" (2013年6月)[/caption]

さて、困った。。。最初からいきなりハイクオリティな草レースとなったことで、2回目というのはかなりプレッシャーを感じていたことは事実だ。しかも、関東のメンバーは大会運営は全員が初めて。MC1が終わって直ぐに、一緒にMC1に参加したトレイル鳥羽ちゃんとROD‼メンバーとでマウンテンサーカス2関東大会(以下MC2)のプロジェクトを発足した。

⇒「草レースやろうぜ!」MOUNTAIN CIRCUS 2 TANZAWA(その2)へ

UTMB 2013 - 街で見かけたギアなど

・・・結局、みんなコッチの話題の方が好きなんでしょ?

ということで、あまり隅々まで見られなかったですが、UTMBのエキスポブース(サロン)周辺で気になったものをピックアップ。

(撮影協力:nobu ,moto M.R.H)

 

[caption id="attachment_1362" align="aligncenter" width="584"]Anton 先ずは真っ先に向かったのがbuffブース。みんなの大好きなトレイルランナー、トニ―ことアントン・クルピチカのシグニチャーモデルのタンク、ショーツ、ヘッドバンド、バフ等。特にヘッドバンドは即売り切れてました。日本には何時入ってくるのでしょうか?[/caption]

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